【2026年版】青色申告で65万円控除を受ける条件とやり方|個人事業主が満額とるための手順

【PR】本記事には広告が含まれています。2026年6月時点の情報をもとに作成しました。

「55万円控除と65万円控除、いったい何が違うんだ?」。青色申告を調べはじめて最初につまずいたのがここでした。同じ青色申告なのに控除額が10万円も違う。なのにその差がどこから来るのかは、どの記事を読んでもピンと来ませんでした。

いろいろと調べまわった結果、国税庁の要件を突き合わせてやっとわかりました。55万と65万の差はe-Taxで申告するか紙で出すか、ほぼそれだけ。電子化のひと手間で10万円ぶんの控除が増えるという話だったんです。

申し遅れました。僕は中小企業の運送会社で働く47歳のトラック運転手です。いつか独立したいと考えていますが、独立はまだこれからで青色申告の経験もありません。税理士でも会計の専門家でもなく、これから申告する側の目線で国税庁の一次ソースを読み直しました。

この記事では65万円控除の条件と55万との違い、満額をとる最短ルートを当事者目線で整理します。会計ソフトの比較は記事6(クラウド会計比較)、必要書類の全体像は記事16(確定申告の必要書類)、税理士に頼る道は記事13(税理士の選び方)に譲ります。ここでは「どうすれば65万円控除になるか」だけに絞りました。

目次

そもそも65万円控除を狙うべき?まず控除額の全体像を知る

65万・55万・10万・白色の控除額をひと目で

確定申告には大きく青色申告と白色申告があり、青色を選ぶと「青色申告特別控除」という所得から差し引ける枠がもらえます控除額は65万円・55万円・10万円の3段階で、白色申告にこの特別控除はありません。

国税庁タックスアンサーNo.2072(令和7年4月1日現在法令等)では、《55万円控除の要件は複式簿記での記帳・貸借対照表と損益計算書の添付・期限内申告。これにe-Tax申告か優良な電子帳簿保存が加わると65万円になる》と書かれています(《》内は原文の趣旨を僕の言葉でまとめたものです。以下同じ)。そこまでの記帳をしない青色申告者は10万円控除です。

区分控除額記帳のレベル出し方
青色(満額)最高65万円複式簿記+貸借対照表・損益計算書を添付e-Tax申告 または 優良な電子帳簿保存
青色最高55万円複式簿記+貸借対照表・損益計算書を添付紙の提出でも可
青色(簡易)最高10万円簡易な帳簿で可問わず
白色特別控除なし記帳・帳簿保存の義務はある問わず

注意したいのは、控除額はいずれも「最高」で、所得がそれより少ない年は所得額が上限になる点です。それと白色でも記帳と帳簿の保存は義務とされています。どうせ帳簿をつけるなら、控除のつく青色を選ぶ価値は十分あるというのが調べた僕の感想です。

65万を狙う人・10万や白色で十分な人

では誰もが65万円を狙うべきかというと、そうとも限りません。向き不向きを分けてみます。

65万円控除を狙う価値が大きいのはこんな方です。

  • 事業所得や不動産所得が継続して出る見込みがあり、節税効果をしっかり受けたい方
  • 会計ソフトなどで複式簿記の体制をこれから整えられる方
  • e-Taxでの申告に抵抗がない方

一方で、10万円控除や白色のままでも十分なのはこんな方です。

  • 所得がまだ小さく、複式簿記の手間が見合わない方
  • 副業を雑所得として申告している方(青色申告の対象は事業所得・不動産所得・山林所得です)

ただ独立して本業でやっていくつもりなら、最初から65万円を狙うのが自然だと僕は感じました。65万と10万の差は所得税と住民税を合わせるとけっこうな金額になるからで、これは後述で実際に計算してみます。

なお、確定申告に出す書類の全体像や会計ソフトどうしの比較はこの記事では扱いません。それぞれ冒頭で挙げた別記事に譲り、ここでは「65万円控除をどう取るか」の一点に絞ります。

控除だけじゃない青色のメリット(赤字繰越・専従者給与)

青色申告のメリットは特別控除だけではありません。調べていて「これは大きい」と感じたものが2つあります。

1つ目は赤字の繰り越しです。国税庁タックスアンサーNo.2070では、事業所得などに赤字(純損失)が出た場合、《その損失を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年の所得から差し引ける》とまとめられています。開業1年目は赤字になりやすいと聞きますから、翌年以降の黒字と相殺できるのは心強い仕組みです。

2つ目は家族への給与です。同じNo.2070には、《生計を一にする15歳以上の配偶者や親族が事業に専ら従事している場合、事前の届出の範囲内で適正な給与を必要経費にできる》と書かれています(青色事業専従者給与)。

ただし専従者給与には配偶者控除と両立できないという注意点があって、これは記事末尾のFAQで触れます。どちらも白色にはない仕組みなので、控除とあわせて覚えておいて損はないと思います。

65万円控除の条件は、実はシンプル

冒頭で、55万と65万の差は電子化のひと手間だけと書きました。この章ではその前提も含めて、65万円控除の条件の全体を国税庁No.2072に沿って「土台」と「上乗せ」に分けて見ていきます。

条件の土台は複式簿記での記帳と決算書の添付

65万円控除の条件は、例えるなら二階建ての家のような造りになっています。1階部分が55万円控除の要件で、その上に電子化という2階がひとつ載るだけです。

まず土台の1階から。国税庁タックスアンサーNo.2072では、55万円控除の要件として《①不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること、②取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳していること、③その記帳に基づいて作成した貸借対照表・損益計算書・所得の金額の計算に関する明細書を確定申告書に添付して期限内に提出すること》の3つが挙げられています。

聞き慣れない言葉を補足すると、貸借対照表は財産の一覧表、損益計算書は1年の儲けの計算書のことです。明細書まで含めて、実務ではこれらは「青色申告決算書」という一式の書類にまとまっていて、複式簿記で日々の取引を記帳していれば会計ソフトがほぼ自動で作ってくれるようです。

なおNo.2072には《現金主義による所得計算の特例を選んでいる方は55万円控除を受けられない》という注意書きもありました。例えるなら、売上や経費を「仕事をした日」ではなく「お金が実際に動いた日」で記録する、家計簿に近い簡単な方式のことです。前々年分の事業所得と不動産所得の合計が300万円以下の方が届出をして選べる特例ですが、帳簿が簡単になる代わりに控除は10万円までになる、という関係のようです。

上乗せ要件はe-Tax申告か優良な電子帳簿保存

土台の55万要件を満たしたうえで、次のどちらか一方に当てはまると控除額が65万円になります。No.2072では次の2つが挙げられています。

  • その年分の確定申告書・貸借対照表・損益計算書などを、提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)で提出する
  • その年分の仕訳帳と総勘定元帳について、優良な電子帳簿の要件を満たして電子データで保存する(適用には一定の事項を記載した届出書の提出が必要)

両方やる必要はなく、片方で足ります。初心者にどちらが現実的かは後述しますが、結論だけ先に言うとe-Tax申告のほうが取り組みやすいようです。優良な電子帳簿保存には訂正・削除の履歴が残る仕組みなど細かい要件があり、対応した会計ソフトと届出書が前提になるからです。

ちなみにNo.2072には《令和4年1月1日から、帳簿書類を電子データのまま保存する場合に必要だった税務署長の事前承認が不要になった》とも書かれていました。電子帳簿保存そのもののハードルは、昔より下がっているようです。

期限内申告と控除額の記載を忘れずに

意外と見落としやすいのが期限です。55万円・65万円控除はどちらも、その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに申告書を提出することが条件に含まれています。

No.2072には《還付申告書を提出する方であっても、55万円または65万円の控除を受けるには確定申告期限までに提出する必要がある》と注記されていました。「還付だからいつでもいい」とはいかないわけです。期限に1日でも遅れると、その年は10万円控除に落ちてしまいます。

もうひとつ、申告書に《この控除の適用を受ける金額を記載する》ことも要件のうちです。とはいえ会計ソフトやe-Taxの作成画面に沿って入力すれば自動で埋まる欄なので、手書きで申告書を作る方だけ気をつければよさそうです。

65万円控除の条件チェックリスト

ここまでの条件をチェックリストにまとめます。上から順に確認して、全部に✓がつけば65万円控除の条件はクリアです。

#チェック項目満たさないと
1事業所得または不動産所得(事業的規模)がある青色申告特別控除(55万・65万)の対象外
2複式簿記で記帳している10万円控除に下がる
3貸借対照表・損益計算書を申告書に添付10万円控除に下がる
4翌年3月15日までに申告書を提出10万円控除に下がる
5申告書に控除額を記載10万円控除に下がる
6e-Tax申告 または 優良な電子帳簿保存55万円控除どまり

※不動産所得は「事業として営んでいる規模」であることが前提です(貸家5棟・貸室10室程度がよく目安とされます)。規模の小さい賃貸は55万・65万の対象にならないことがあるので、該当しそうな方は税務署で確認してください。

見てのとおり1〜5が55万円の1階部分で、6だけが65万円への2階です。この6のひと手間に10万円の価値があるかを、続く「65万と55万は『e-Taxか紙か』だけ」で計算してみます。

65万と55万は「e-Taxか紙か」だけ|10万円差を手間で考える

55万と65万の唯一の差は電子化の有無

前述の「65万円控除の条件は、実はシンプル」のチェックリストを見て気づいた方もいると思いますが、55万円控除の条件と65万円控除の条件は、1〜5がまったく同じです。帳簿は同じ複式簿記、決算書の添付も同じ、期限も同じ翌年3月15日。違うのは6番目の「電子化」だけです。

つまり65万円控除の条件を満たす人と55万円控除どまりの人は、やっている経理の中身がほぼ変わりません。申告書を紙で出すかe-Taxで出すか、あるいは帳簿を優良な電子帳簿で保存しているか(国の基準を満たした会計ソフトで帳簿を電子データのまま保存する方法。本章の最後で詳しく説明します)。その一点で控除額に10万円の差がつきます。

僕は最初、65万円には55万円よりずっと重い条件があるのだと思い込んでいました。でも国税庁No.2072を読む限り、上乗せはこの電子化だけです。だからここでは「その電子化のひと手間に、10万円分の価値があるのか」を計算してみることにしました。

10万円の差は「ひと手間」に見合うか計算してみた

控除が10万円増えると、税金はいくら安くなるのか。国税庁タックスアンサーNo.2260(令和7年4月1日現在法令等)では、《所得税の税率は課税される所得金額に応じて5%から45%の7段階》とまとめられています。これに住民税(所得割・標準税率10%)を足した割合が、控除10万円分のおおよその節税額になります。

補足すると、表にある課税所得とは、1年の収入(売上や給与)から経費や基礎控除・社会保険料控除などを引いた後の「税率を掛ける直前の金額」のことです。年収や売上そのものとは別物で、たいていそれよりかなり小さくなります。

課税所得の目安所得税率65万円控除の節税額(年)55万円控除の節税額(年)その差(年)
300万円10%約13.0万円約11.0万円約2.0万円
500万円20%約19.5万円約16.5万円約3.0万円
800万円23%約21.5万円約18.2万円約3.3万円

※2026年6月時点の税率での概算です。住民税は標準税率10%で計算しており、自治体により多少異なります。復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)は含めていません。控除で税率の段階をまたぐ場合は金額が変わります(表の3つの例は、またがない金額を選んでいます)。

読み方の例を挙げます。課税所得300万円の人は、65万円控除なら税金が年に約13万円、55万円控除なら約11万円安くなります。その差の約2万円が「e-Taxか紙か」のひと手間の価値です。

注目したいのは、これが1回きりではなく毎年の差だという点です。課税所得500万円の人なら年約3万円、10年続ければ約30万円。e-Taxで申告するという、慣れれば数時間のひと手間にしては大きなリターンだと僕は感じました。紙の申告にこだわる理由が特にないなら、55万で止まるのはただもったいないというのが計算してみた結論です。

e-Taxと電子帳簿保存、初心者はどちらが楽か

電子化の道は2つありますが、これから始める人にはどちらが現実的か。両方の特徴を並べてみます。

e-Tax申告(初心者向き)

  • マイナンバーカードがあれば、スマホやパソコンから始められます
  • 多くの会計ソフトは作った申告書をそのままe-Tax送信できます
  • 申告のときの行動だけで完結し、年の途中の準備は不要です

優良な電子帳簿保存(中級者向き)

聞き慣れない言葉なので補足すると、優良な電子帳簿保存とは「国の決めた基準を満たすやり方で、帳簿を紙に出力せず電子データのまま保存すること」です。国税庁の電子帳簿保存法の案内(令和5年度改正版パンフレット)では、優良な電子帳簿の主な要件として《①訂正・削除の履歴が残ること、②帳簿どうしの記録が関連づけられていること、③日付・金額・相手方で検索できること》の3つが挙げられています。

例えるなら、消せるエンピツで書いた家計簿ではなく、「いつどこを書き直したか」が全部記録に残るドライブレコーダー付きの帳簿です。あとから数字をこっそり直せない仕組みだからこそ国の信頼度が高く、同じ案内には《あらかじめ届出書を提出したうえでこの帳簿を備えていれば、申告漏れがあっても過少申告加算税が5%軽減される》という優遇も書かれています。

その代わり、この仕組みを備えた会計ソフトで年初から帳簿を付け続けることが前提で、エクセルや手書きでは実現できません。これから始める人がいきなり狙うものではない、というのが正直なところです。ただし後述の「令和9年分から『75万円』へ」で扱うとおり、将来の75万円控除につながる選択肢でもあります。

結論として、初めての年はe-Tax申告で65万円を取りにいくのが楽だと思います。優良な電子帳簿保存は、複式簿記の運用に慣れてからで遅くありません。具体的な始め方は最新の案内が変わることもあるので、e-Tax公式サイトで確認してください。

65万のいちばんの難所は「複式簿記を続けられるか」

初心者が複式簿記でつまずく具体ポイント

前述の「65万円控除の条件は、実はシンプル」で書いたとおり、65万円控除のルール自体はシンプルです。ただ調べるほどに感じたのは、本当の難所は条件の理解ではなく、複式簿記を1年間続けることだという点でした。

僕自身も簿記は未経験です。そこで経験者の体験談や解説を読み歩いてみると、つまずきポイントとして繰り返し挙がっていたのは次の5つでした。

  • 借方・貸方の壁:取引を左右に分けて書く複式簿記独特のルール。最初は「どっちが左?」で手が止まる
  • 勘定科目の迷い:ガソリン代は車両費か旅費交通費か。科目選びで毎回悩む
  • 事業とプライベートの混在:事業用の口座やカードを分けていないと、仕訳が一気に複雑になる
  • 領収書のため込み:数か月分をまとめて記帳しようとして挫折する
  • 決算で数字が合わない:年末に貸借対照表の左右が一致せず、原因探しで心が折れる

どれも「知識」より「習慣」の問題に見えます。逆に言えば、この5つを最初から潰す仕組みを用意できれば、65万円控除はぐっと現実的になるはずです。

エクセル無料テンプレで続く人・続かない人

仕組みづくりでまず思いつくのは、無料で手に入るエクセルの帳簿テンプレートです。検索すれば仕訳帳や元帳のテンプレートは見つかりますし、複式簿記をエクセルでやること自体は可能です。

ただ、向き不向きははっきり分かれると感じました。続きそうなのは、簿記の知識がすでにあり、取引の数が少なく、自分で転記ミスに気づける人です。月の取引が数件なら、エクセルでも十分回るでしょう。

一方で僕のような簿記未経験者には、正直厳しそうです。仕訳帳から総勘定元帳、決算書への転記を自分の手でやる(または数式を自分で組む)ことになり、つまずきポイントの大半がそのまま残ります。数式をうっかり壊しても気づきにくく、間違った決算書で申告してしまうリスクもあります。

それと前述の「65万と55万は『e-Taxか紙か』だけ」で触れたとおり、エクセルの帳簿は優良な電子帳簿保存の要件を満たせません。e-Tax申告で65万円は取れますが、その先の選択肢は閉じたままになります。無料という入口の軽さと、続ける重さ。テンプレ選びはこの天秤だと思います。

会計ソフトが複式簿記のハードルをどう下げるか

つまずきポイント5つを技術で解消しようとしているのが、クラウド型の会計ソフトです。調べた範囲では、多くのソフトに共通して次のような仕組みがありました。

借方・貸方を意識しなくても、日付や金額を家計簿感覚で入力すれば裏側で複式簿記の仕訳に変換され、勘定科目も候補から選ぶだけで済みます。さらに銀行口座やクレジットカードを連携すれば、取引の取り込みから仕訳の提案までを自動化できます。年末には貸借対照表と損益計算書が自動で出来上がり、そのままe-Tax送信に進める。

つまり「知識の壁」と「習慣の壁」の両方を、仕組みで肩代わりしてくれるわけです。

たとえば弥生の「やよいの青色申告 オンライン」は、簿記の知識がない人でも取引を入力していけば青色申告の決算書類まで作れる設計をうたっていて、e-Tax申告にも対応しています(2026年6月時点・最新のプランや料金は公式サイトで確認してください)。

複式簿記のハードルが不安なら

ここまで調べて思ったのは、簿記未経験から65万円控除を目指すなら、最初から会計ソフトに頼るのが現実的だということです。少なくとも僕が独立したら、エクセルではなく会計ソフトから始めるつもりです。

「やよいの青色申告 オンライン」は、家計簿感覚の入力で複式簿記の帳簿と決算書類を自動作成でき、そのままe-Tax申告まで進められます

やよいの青色申告オンライン

なお、freeeやマネーフォワードを含めたソフトごとの違いと選び方は記事6(クラウド会計比較)で詳しく扱っています。この記事では「ソフトを使えば難所が消える」ところまでで止めておきます。

65万を取るための申請手続き|承認申請書をオンラインで出す

承認申請書はいつ・どこに出す

65万円控除うんぬんの前に、そもそも青色申告をするには「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に出して承認を受けておく必要があります。ここを逃すとその年は白色申告しかできず、控除の話が丸ごと消えます。

国税庁の手続案内(A1-8)では、提出先は《納税地の所轄税務署長》、期限は《青色申告をしようとする年の3月15日まで。その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、開業の日から2か月以内》とまとめられています。期限が土日祝に当たる場合は翌開庁日が期限です。

あなたの状況承認申請書の提出期限
すでに開業していて、来年以降の分から青色にしたい青色にしたい年の3月15日まで
その年の1月16日以後に新しく開業した開業日から2か月以内
その年の1月1日〜15日に開業したその年の3月15日まで

なお相続で事業を引き継いだ場合は別の期限が定められているので、該当する方は国税庁の手続案内(A1-8)を確認してください。それと提出しても税務署から承認の通知は基本届きません。その年の12月31日(11月1日以後に開業した場合などは翌年2月15日)までに非承認の通知がなければ、承認されたものとみなす決まりがあるためです。返事がなくても不安にならなくて大丈夫です。

e-Taxや会計ソフト経由で申請する流れ

承認申請書は紙でも出せますが、どうせ65万円控除のためにe-Taxを使うなら、申請からオンラインで済ませるのが手っ取り早いと思います。大きな流れは次のとおりです。

  1. マイナンバーカードを用意する(e-Taxの利用者識別番号もここで取得できます)
  2. 申請書を作る:e-Taxソフト(WEB版)か、会計ソフト各社の無料の開業書類作成サービスで入力。開業届とセットで作れるサービスなら一度の入力で済みます
  3. 電子署名してオンライン送信する:税務署に行く必要はありません
  4. 受信通知(控え)を保存する:屋号付き口座の開設などで提出の証明を求められたときに役立ちます

申請から申告までオンラインで完結させたいなら

承認申請書を出した後は、複式簿記の帳簿づけと翌年のe-Tax申告が本番です。

マネーフォワードの「MFクラウド確定申告」は、日々の帳簿づけから決算書の作成・e-Tax送信までを、ひとつのソフトの中で最後まで進められます。65万円控除の上乗せ要件(e-Tax申告)も、この流れのままで満たせます。

無料の確定申告自動化ソフト マネーフォワード クラウド確定申告

「すでに開業」と「これから開業」で出し方が違う

最後に、立場による違いを整理します。

これから開業する方は、開業届と承認申請書をセットで出すのがいちばんスムーズです。開業届の書き方や提出方法そのものは記事11(開業届の出し方)で詳しく扱っているので、この記事では深入りしません。

すでに白色で申告してきた方は、表のとおり「青色にしたい年の3月15日まで」が期限です。この記事を書いている2026年6月時点から出す場合、適用は早くても令和9年(2027年)分から。つまり思い立った今が、いちばん早い提出タイミングです

承認申請書が片づいたら、あとは確定申告に向けた書類の準備に進みます。決算書や控除証明など申告に必要な書類の全体像は記事16(確定申告の必要書類)に任せて、この記事は続く「65万円控除は自力で取るか、ソフトや税理士に頼るか」から、65万円を取り切る話に戻ります。

65万円控除は自力で取るか、ソフトや税理士に頼るか

ここまで会計ソフトの話が続いたので、この章ではいったん立ち止まって、お金をかけずに自力で取る道も含めて考えてみます。

自力(エクセル+e-Tax)で65万を取れる人

まず確認しておきたいのは、65万円控除は理屈のうえでは1円もかけずに取れるということです。エクセルや手書きで複式簿記の帳簿を付け、国税庁の確定申告書等作成コーナーで決算書と申告書を作り、e-Taxで送信する。これで条件は満たせます。

調べた限り、自力で続けられそうなのは次のような方です。

  • 簿記の知識がすでにあるか、簿記3級程度を学ぶ意欲がある
  • 取引の数が少ない(目安として月に数件〜十数件)
  • 月に一度、帳簿と向き合う時間を確保できる
  • 数字のズレを自分で探す作業が苦にならない

費用ゼロという利点に加えて、お金の流れを自分の手で追うので事業の数字に強くなるという副産物とも言える知識を得られます。当てはまる方は、まず自力で1年やってみる選択も十分ありだと思います。

ソフトや税理士に任せた方がいい人

一方で、前述の「65万のいちばんの難所は『複式簿記を続けられるか』」で見たとおり、難所は知識ではなく継続です。次に当てはまる方は、最初から道具や人に任せた方が結果的に安くつくのでは?と感じました。

ソフトに任せた方がいい人は、取引の数が多い方や経理より本業に時間を使いたい方です。判断の物差しはシンプルで、「月の取引数×処理時間」が自分の時給を上回るなら年1万円前後のソフト代は十分元が取れます。

税理士まで視野に入れた方がいい人は、売上の規模が大きい方、消費税やインボイスの判断が絡む方、初年度から数字を間違えたくない方です。丸ごと任せれば帳簿も申告も手離れしますが、費用は年数万円〜十数万円と桁が変わります。頼み方や費用感、「1,000万円の罠」の話は記事13(税理士の選び方)で詳しく扱っています。

僕自身はどうするか。取引が少ないうちはソフト+自分、規模が育って消費税が見えてきたら税理士に相談、という順番が現実的だと考えています。

令和9年分から「75万円」へ|今年やることは変わらない

令和8年度改正で控除はこう変わる

ここまで「65万円」を前提に書いてきましたが、実はこの控除、近々変わります。

令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」(財務省サイトで公表)では、青色申告特別控除の見直しとして《55万円控除はe-Taxでの期限内提出を要件に加えたうえで65万円に引き上げ、65万円控除は仕訳帳と総勘定元帳について電子帳簿保存法に定める電子データの保存を行っていることを要件として75万円に引き上げる。適用は令和9年分以後の所得税から》という内容がまとめられています。

この内容を盛り込んだ改正法(所得税法等の一部を改正する法律・令和8年法律第12号)は、2026年3月31日に成立・公布済みです。さらに国税庁も令和8年4月に、個人事業者向けの案内「令和9年分から青色申告特別控除はどう変わる?」を公表していて、同じ見直し内容を説明しています。

言葉にすると複雑なので、組み合わせごとに表で並べます。

記帳と申告の組み合わせ令和8年分まで(現行)令和9年分から
複式簿記+e-Tax申告+優良な電子帳簿65万円75万円に増額
複式簿記+e-Tax申告65万円65万円(変わらず)
複式簿記+紙で提出55万円10万円
簡易な記帳10万円10万円※

※簡易な記帳の10万円控除は、前々年分の収入金額(事業所得・不動産所得それぞれで判定)が1,000万円を超える人は対象外になります。国税庁の案内では、この除外は簡易な簿記で記帳している人が対象で、不動産所得は事業的規模の場合のみと説明されています。細かい運用は国税庁の最新の案内で確認してください。

注目してほしいのは2行目です。複式簿記+e-Taxの65万円は、改正後もそのまま65万円。一方で複式簿記でも紙で出し続けると、55万円が一気に10万円まで落ちます。改正の本質は「控除の増額」より「紙からの卒業をうながす」ことにあるように見えました。

今年と来年の申告は、現行の65万円のまま

「じゃあ今から準備する僕は、どっちのルールでやればいいんだ?」と一瞬混乱しましたが、詳しく調べてみて理解できました。適用は令和9年(2027年)分から。つまり2027年の年明けから12月までの所得を、2028年の3月に申告する分からが新ルールです。

それまでの申告、たとえば令和8年(2026年)分を2027年3月に出す場合は、この記事の前半で書いた現行ルール(複式簿記+e-Taxで65万円)がそのまま使われます。

そして表のとおり、複式簿記+e-Taxという組み合わせは新ルールでも65万円で生き残ります。だから「改正があるから様子見」は不要で、今やるべきことは一つも変わりません。むしろ今のうちにe-Tax申告に慣れておけば、前の表で見た「紙のまま申告して控除が10万円まで下がる」という事態とも無縁でいられます。

75万円を見据えるなら、優良な電子帳簿の準備を

そのうえで、どうせなら75万円まで狙いたい方が今からできる準備も書いておきます。鍵は前述の「65万と55万は『e-Taxか紙か』だけ」で触れた優良な電子帳簿保存です。

訂正・削除の履歴が残ること、帳簿どうしが関連づくこと、日付・金額・相手方で検索できること。この3要件を満たす形で仕訳帳と総勘定元帳を運用し、届出書を出しておく。それが75万円の上乗せ条件の本筋になります(届出などの細かい手続きは、今後の国税庁の案内で確認してください)。

優良な電子帳簿は年の途中からの切り替えが難しい仕組みなので、狙うなら帳簿の付けはじめから対応ソフトで運用しておくのが近道です。

75万円控除まで見据えるなら

優良な電子帳簿保存は、対応した会計ソフトでの運用が事実上の前提です。

freee会計は優良な電子帳簿保存への対応をうたっており、日々の記帳からe-Tax申告・電子帳簿の保存までを最初から75万円仕様で整えられます(2026年6月時点・対応プランの詳細は公式サイトで確認してください)。

freee会計【freee会計】

青色申告65万円控除のよくある疑問

最後に、調べている途中で僕自身が「あれ、これはどうなんだ?」と手が止まった疑問を3つまとめておきます。

配偶者控除と青色専従者給与は両立しない

A,結論から言うと、妻(夫)に青色事業専従者給与を払ったら、その年は配偶者控除を受けられません

国税庁タックスアンサーNo.2070には、《青色事業専従者として給与の支払を受ける方は、同一生計配偶者や扶養親族にはなれない》と書かれています。国税庁の質疑応答事例「青色事業専従者である妻」でも、専従者給与を受けた配偶者は控除対象配偶者にできないとまとめられています。つまり「給与を経費にしつつ配偶者控除も取る」という二重取りはできない仕組みです。

どちらが得かは、払う給与の額と世帯全体の税負担で変わります。給与を経費にする節税が配偶者控除(一般の配偶者で最大38万円)を上回るかが分かれ目で、専従者給与には事前の届出書も必要です。家族を巻き込む判断なので、迷ったら税務署か税理士に確認するのが確実だと思います。

赤字が出た年は?純損失の繰越控除(3年)

A,赤字の年も青色で申告しておけば、その赤字を翌年以後3年間の黒字と相殺できます。

前述の「そもそも65万円控除を狙うべき?」でも触れたとおり、国税庁No.2070では《損益通算しても引き切れない純損失は、翌年以後3年間にわたって繰り越して各年の所得から控除できる》とまとめられています。前年も青色なら、損失を前年に繰り戻して所得税の還付を受ける道もあるようです。

注意したいのは、赤字が出た年もきちんと確定申告書を出し、その後も毎年続けて申告しておく必要があること。「赤字だから申告しなくていいや」と放置すると、この繰り越しが使えません。開業1年目が赤字でも申告だけはしておく。これは覚えておいて損のないルールだと感じました。

無料の青色申告ソフトはある?

A,完全無料で済ませる王道は、ソフトではなく「自作の帳簿+国税庁の確定申告書等作成コーナー」の組み合わせです

前述の「65万円控除は自力で取るか、ソフトや税理士に頼るか」で書いたとおり、エクセル等で複式簿記の帳簿を付け、作成コーナーで決算書と申告書を作ってe-Tax送信すれば、費用ゼロでも65万円は取れます。ただし作成コーナーに日々の帳簿を付ける機能はありません。

会計ソフト各社にも無料プランや無料体験はありますが、使える機能や期間に条件が付くのが一般的です(2026年6月時点)。どのソフトのどのプランが自分に合うかは、記事6(クラウド会計比較)で比較しているのでそちらに譲ります。

まとめ|65万円控除の条件はシンプル、勝負は「続ける仕組み」

ここまでを、独立準備中の僕の目線で3つに絞って振り返ります。

  • 条件はシンプル:複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添えて翌年3月15日までに申告する。これが土台で、本当の難所は知識ではなく「複式簿記を1年続けられるか」でした
  • 55万との差はe-Taxか紙か、ほぼそれだけ:電子化のひと手間で控除が10万円増え、課税所得500万円なら年約3万円の差。しかも毎年積み上がる差です
  • 令和9年分からは75万円の体系へ。でも今やることは変わらない:複式簿記+e-Taxの65万円は改正後も維持。優良な電子帳簿まで整えれば、その先に75万円が見えてきます

これから65万円控除を狙う道順は、「承認申請書を期限内に出す→複式簿記が続く仕組み(ソフトか自力か)を決める→e-Taxで期限内に申告する」の3歩です。調べる前に身構えていたほどの壁はありませんでした。身構えるべきはむしろ日々の記帳のほうで、だからこそ最初の仕組みづくりに時間をかける価値があると感じています。

なお税制は変わるものなので、申告の直前には国税庁の最新の案内を確認してください。本記事の内容は2026年6月時点の調査に基づいています。

青色申告の準備は、開業準備全体の一部です。開業届や口座、資金まわりも含めた全体の段取りは開業準備のまとめ記事(記事1)で扱っています。僕もこのリストを横に置きながら、独立の準備を一歩ずつ進めていくつもりです。

関連記事リスト

出典一覧

  1. 国税庁タックスアンサーNo.2072「青色申告特別控除」(令和7年4月1日現在法令等)
    URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
    確認日:2026年6月6日
  2. 国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」(令和7年4月1日現在法令等)
    URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
    確認日:2026年6月6日
  3. 国税庁タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」(令和7年4月1日現在法令等)
    URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
    確認日:2026年6月6日
  4. 国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました」(令和5年度改正版パンフレット)
    URL:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0023003-082.pdf
    確認日:2026年6月6日
  5. 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
    URL:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
    確認日:2026年6月6日
  6. 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定/一 個人所得課税 4(3)青色申告特別控除の見直し)
    URL:https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_01.htm
    確認日:2026年6月6日
  7. 国税庁「令和9年分から青色申告特別控除はどう変わる?(簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ)」(令和8年4月)
    URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0026004-012.pdf
    確認日:2026年6月6日
  8. 国税庁タックスアンサーNo.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」
    URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm
    確認日:2026年6月6日
  9. 国税庁 質疑応答事例「青色事業専従者である妻」
    URL:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/11.htm
    確認日:2026年6月6日

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